あの日………1997.11.16(Sun):決戦(後半45分その2)

まぁ、イチ国民が勝手に心中を決め込んでも、
何も変わるわけではない。
歴史を変えてくれるであろうブルーのユニフォームを着たイレブンを信じるしかない。


正直もう時計など目にしてない(したかも知れないが、覚えていない)から
後半何分の出来事かは分からない。
ただ、ひたすら長い間重苦しい雰囲気が続いていた。
「とにかく、何でも良い…何でも良いからゴールしてくれぇ!」
心の中で叫びながら、選手達の戦いに目をやった。


日本のコーナーキック。左サイドからでキッカーはヒデだった。
そしてこぼれ球を拾ったのは、アリ・ダエイだった。
まだ、イランのペナルティエリア付近。。。
日本のエンドから見て右サイドにダエイがいた。




それは、あのとき観戦していた全ての日本サポーターが凍りついた瞬間だった。
本来、セットプレイ時に後ろをしっかり守っているはずの名良橋・相馬がいない。
彼らは揃いも揃ってイランFWによって、日本の左サイドの片隅に追いやられていた。


ダエイの前に立ちはだかるのは山口、ただひとり。
その後ろにはゴールキーパー川口まで大きな大きなスペースが口を開けていた。
攻撃参加していた井原が必死になってダッシュで戻るが、
彼の左前方2〜30m前を白いユニフォームの男達が3人も走り込んでいた。
山口はその3人につかずダエイのボールを抑えることをチョイスした。。
ただ、ダエイとは、まだ6〜7mほど間合いがあった。
ダエイは日本の息の根を止めるこの瞬間を意地悪く楽しむように慎重にボールを運んだ。
隙を見せないように後退りする山口。


どうあがいても次の瞬間、イラン選手と川口のゴール前1対1になる………
しかも相手は3人だ。イランに駄目押しの3点目を覚悟する。
「終わっちゃうのか><」


ダエイは「中央にパス」を選択した。
次の瞬間、山口の足が高々と上がる。


………ダエイの放ったボールが………
………山口の上げた足に吸い付いてくれた………


頭を抱えて立ち尽くしてしまうダエイ。。。




「あ、あ、あ。引っかかった。引っかかってくれた。」
「助かった〜〜〜。ホント助かったよ。」




私はず〜っとず〜っと心の中で、山口のスーパープレイに浸っていた。
「これで、これで…。まだ、希望を持って良いんだ!」
少し勇気が湧いてきた。






今でも私の印象では、
山口のスーパープレイから5分程度の余韻があったように思えてる。
しかし、あとでVTRを見てみると、
このスーパープレイの数秒後に「城ヘッド!!!」が炸裂したのだった。


山口がダエイのボールをインターセプトし、
中央の名波に渡し、名波から左サイドに残っていたヒデへ。
そして、ヒデのクロスを体半分飛び抜けた城のヘッドが捉え、相手ゴールを揺るがした。






ジョホールバルの歓喜 - Wikipedia