あの日………1997.11.16(Sun):決戦(後半45分その3)

同点に追いついたモノのいつもの如く詰めが甘い代表。。。
もはや全てにおいて相手を圧倒していたが勝ち越すまでには至らなかった。
そして前後半90分の戦いが終わる。


「こりゃ、えらい試合になるな。PKだけは勘弁だぞ。」
それと同時に何とも云い難い悔しさも募る。
ビデオ………延長じゃ、撮れないジャン。
家を出る前に留守録をしておいたが、用意していたテープは120分。
前後半90分しか撮れないテープ量だった。


(帰国してイの一番でチェックをしたが、案の定、延長前半開始前で途切れていた。。。)


日本の交代枠は残り一人。
私は「今度こそ、中村忠出せ!名良橋、要らん。」
くどくど、そう願ってた。


近場でオバチャンが話をしていた。
「ねぇねぇ、あの左右に行ったり来たり走ってるの誰かな?」
「え!?どこどこ?あ、あれ。。。う〜ん、北澤じゃない。」
「北澤???今まで出てたじゃない。あ、髪の毛長いから、ラモスよ。」


「ラモス!?誰じゃそいつ。」苦笑しながら、ピッチに目をやると、
長髪をなびかせ、サッカー選手に似付かわしくない大股のストライドで走るブルーの戦士がいた。


それが何を意味するのか、すぐに分かった。
これまで最終予選で1分たりともピッチに立つことを許されなかった男。。。
その男が颯爽とピッチ上でダッシュを繰り返していた。
そして、予感めいたモノがピンと来た。
「この試合、岡野が決めちゃうんだろうなぁ………」


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85メキシコW杯地区予選  、、、聖地国立をアウェイと化してしまった屈辱の北朝鮮戦。
                 香港戦 神懸かり的なPKセーブを連発した控えキーパー森下。
85メキシコW杯地区最終予選、、、
トヨタカップ高校サッカー・釜本の引退試合以外は閑古鳥が鳴いていた国立。。。
このとき、そこには無数の日の丸と途切れることのないチアホーンの音があった。
そして、一人のカメラマンに仕事を忘れさせ、ガッツポーズをさせた木村和司の直接FK。


93アメリカW杯最終予選、、、日韓戦カズの泥臭い決勝弾。
               イラク戦カズの先制弾
                   ホントはオフサイだろ?中山勝ち越し弾。
                   そして、無情のイラク同点ゴール
                   その後のウルトラス懸命の「ニッポン」コール。。。
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これら全てを一瞬にセピア色に色褪せさせるのが、岡野だと思った。
文字にすれば長いが、これらの事柄が一瞬にして頭を駆け巡っていた。


それと同時に「岡ちゃん………お見逸れしました。その一手、申し分有りません。」
心の中でコウベを垂れた。






ジョホールバルの歓喜 - Wikipedia